RSD(反射性交感神経性ジストロフィー・カウザ ルギー)

私は今ある痛みと闘っています。
それがRSDと呼ばれるものです。
ここではRSDの詳しい症状なとを記しておきます。
同 じように痛みと闘っている人の参考になれば幸いです。

 外傷や手術の後に、傷は完治しているのに痛みやしびれが続く場合があり、反射性交感神経性ジストロフィーと呼びます。神経が明らかに切断された りした後に、激しい痛みが続く場合をとくにカウザルギーと呼びますが、同種の病気です。各種神経ブロック、リハビリテーションを行いますが、完治はなかな か困難です。


 RSDの診断と症状

肩手症候群は肩・頚の外傷、心筋梗塞、CVA、胸部腫瘍などで好発し、数多くの診断名がRSSとして使用されているが、それらは次のものを含んで いる。疼痛性神経ジストロフィー、慢性外傷性浮腫、小カウサルギー、軽症カウサルギー、末梢性栄養神経症、疼痛性骨粗鬆症、肩手指症候群、外傷性血管スパ ズム、交感神経痛、外傷後疼痛症候群、反射性疼痛性ジストロフィー、Sudeck萎縮などである。
RSDは時間的経過とともに臨床経過も変化し、 おおむね1期〜3期に大別できる。第1期には肩の疼痛・運動制限に伴って同側の手(関節・手指ふくめて)の疼痛、腫張、血管運動性変化(血流の増加、皮膚 温上昇、赤味の増加)が起こる。手・肩の骨の変化(局所的脱石灰化)がX線上で見られることが多い。手指は多くの場合、ほぼ伸展した位置をとっていること が多く、くっきょくいの可動域が制限されている。他動的屈曲で強い痛みが起こることが多い。この時期は3〜6ヶ月続き、治癒あるいは第2期に移行する。第 2期は肩・手の自発痛と手の腫張などはピークを迎え、徐々に消失し、かわって皮膚の萎縮、小手筋の萎縮が目立ってくる。時にDupuytren拘縮様の手 掌筋膜の肥厚が起こる。指の可動域はますます制限が著しくなる。この時期は3〜6ヶ月続き、適切な治療が行われないと3期に移行する。第3期は手の皮膚・ 筋の萎縮が著名となり、手指は完全な拘縮となる。広範な骨の萎縮があり、腫張・疼痛は低下し皮膚温や発汗も低下する。この時期までくると普通回復を望めな い。
手の変化の機序;浮腫は手指の背側に著明であるが、これは手指背側は血管やリンパ管が豊富だからである。手指背側での浮腫は手指の伸筋腱を持 ち上げて上肢のマッスルポンプ作用を障害するので、手指は全屈曲不能となる。ポンプ作用の障害は肩にも影響し、肩のROM制限もきたす。浮腫は手指の側副 靭帯の下にしみ込んで、伸展位で緊張させる。通常はこれらの関節の不一致のため靭帯は伸展位でたるみがあり、全屈曲で緊張する。治療をしない手や手指は部 分的に屈曲位のままであり、関節周囲の組織は拘縮を起こす。軟骨への血液供給が障害され、徐々に萎縮性の関節症の症状が起こる。骨への血液供給も制限され て骨粗鬆症を起こす。皮膚は虚血性の萎縮と線維性の肥厚、および毛嚢の肥厚を起こす。このように浮腫は、後述する痛みの機序とともに機能障害におおきく関 与している。

  RSDの発生機序

RSD、肩手症候群の発生機序に関しては多くの研究者・臨床家が考察をしているが、いまだ仮説の域を脱していない。しかし Steinbrockerが肩手症候群をRSDとして論じて以来、その発生機序に関する仮説を適用することが主流となっている。RSDの発生機序について は、Livingstonが痛みの機序を説明するために反射の悪循環説を提唱したものを、Evansが一部修正したものが今日も引用されている。後根から 入る感覚求心性インパルスは脊髄のinternuncial poolにはいり、末梢刺激がある程度続くと、closed chainの中をインパルスが循環するようになり、シナプスを結合を強め、自己を再強化し続けるようなかたちで異常が持続する。一方、その回路におけるイ ンパルスは自律神経の細胞がある側角や運動神経細胞がある前角に伝達され、交感神経遠心路に作用し活動を増大させる。その結果末梢損傷部ではさらに求心性 インパルスは増悪し、反射の悪循環が成立する。この説では最初の異常なインパルスは身体各所(心臓、脳・脊髄、骨、筋など)で発生した病変により痛みの刺 激として脊髄に伝わったものとされている。この説では交感神経ブロックなどを反復使用し、痛みの悪循環を断つことが重要な治療とされる。心筋梗塞やCVA ではこのような機序と基本的には共通しているとされているが、特徴的な病態生理があり、若干ことなる。
1. 心筋梗塞
古くから心筋梗塞による肩甲部痛や肩の運動障害は見られ、肩手症候群に似た症状が記載されてきた。肩甲部痛に関しては、肩甲部に軽い疼痛 がすでに存在し、狭心性の放散痛による有痛性運動制限を生じる場合と、関連痛そのものが心臓損傷部位からの求心性インパルスがTh1〜4の高さで脊髄に入 りそこでinternuncial poolを興奮させるために発症すると考えられ、さらにRSDに加えて、冠動脈閉塞により、心拍出量の減少、血圧降下、心不全の進行、虚血、組織の無酵素 症などをしょうじ、これが血管攣縮反応と局所的栄養障害をまねくことでもinternuncial poolを興奮させると考えられている。心筋梗塞によるRSDは梗塞後時間がかかって発症することから肩甲部の長期不使用や関節炎、頚椎症も関係している ものと思われる。
2. CVA
CVAによる片麻痺では麻痺側に種々の自律神経障害が出現することは古くから観察され、なかでも血管運動障害は注目されている。一般に麻痺 側の筋血流量は低下しており、筋の血流は筋の活動性に相関があることからも、肩手症候群の多くがBrunnstromテストの上肢stage3以下という 重症例に随伴し、麻痺側の筋血流の低下の傾向は大きいと思われる。血管の神経支配は交感神経によるものであっても、骨格筋においては拡張線維も分布してい ると仮定されること、皮膚血流な局所需要とともに全身性体温調節と関連して変化すること、交感神経切除の結果、皮膚、結合織、骨などの動脈は拡張し、その 組織血流は増加するが、骨格筋では不変か、時に減少をみる。片麻痺における血管の拡張は皮膚、結合織、骨などの血流増加を反映したものと考えるべきであ る。肩手症候群を伴う片麻痺の皮膚血流については患肢で増大し、特に1期に著しい。急性期の損傷脳では損傷領域周辺の血流増加が認められることがあり、そ の発生期機序としてcerebral moter paralysisとして説明するものもある。麻痺肢についても血管運動神経麻痺による血流増加と考えたいことから大脳にも自律神経の中枢が存在すると仮 定されている。それはarea4および6に存在するとされ、体性運動線維とともに概当筋の血管拡張線維、皮膚などの血管へは血管収縮線維を送り随意運動を 起こすに当たり、酸素運搬や栄養運搬経路を確保しようとしている。これが障害されることで末梢の血管動態は著しく混乱し、痛みの悪循環を引き起こしやすく なる。

3. 各種理論
1)エファプス仮説
電気的に刺激された神経線維が他の神経線維をも興奮させることをエファプシス(ephapsis:人工接触伝 導)といい、この接触部位をエファプスという。Artificial synapsesともいい、求心性線維と遠心性線維の間で刺激伝達がされてしまうもので、一度できてしまうと遠心性交感神経の興奮だけで痛みを感じる。つ まり侵害刺激がなくとも疼痛を引き起こす。とりわけ求心性線維は体性感覚神経のC線維、遠心性線維は交感神経節後線維のC線維でお互い無髄で同一の神経束 にあるため外傷などがなくてもインパルスの増大により、移行されることは充分考えられる


2)WDR説
脊髄後角に存在する求心性侵害受容と機械的刺激受容の集合体で、無髄線維の反復電気刺 激が後角で受容域をひろげることで、微小な侵害受容や機械受容により痛みを発射させる。それと同時に側角や前角の細胞への発火も強め、自律神経症状が出現 する。これは末梢活動の増加により中枢の知覚過敏状態をひきおこすために起こる。


3)中枢性疼痛抑制の障害
中枢神経系には疼痛を管理するオペレーションシステムが存在し、痛みにか んしてある程度の抑制をかけることができている。大きく3っあるが、一つ目がゲートコントロールセオリーで大径線維が小径線維を脊髄後角で斜断するという ものである。二つ目は神経節内でのオピ系の疼痛抑制物質の存在で、侵害受容の反復刺激により増加したノルアドレナリンを抑制する役目があり、それにより感 受性の亢進を防いでいる。三つ目は中脳中心灰白質などに存在する下行性性抑制の存在で、延髄の大縫線核などを経由して脊髄後角にたいして抑制をかけてい る。このような中枢での疼痛抑制の機能が低下もしくは消失すると疼痛の解発が生じることになる。


4)神経損傷による神経過敏
神経は損傷されると、不全型では損傷部よりカテコールアミンが放出さ れ、小嚢を形成し、異常信号を自然発火させる。そしてその膜にアドレナリン作動性受容体ができて感受性が高まる。完全に断裂されると、損傷部よりNGFが 放出されて神経を刺激し、遠位端より芽が多数でてきて多くの神経終末を形成して、その末端よりアドレナリン作動性因子を大量に分泌して神経はさらにアドレ ナリン作用の感受性が高まり、痛みを引き起こす。


5)発痛物質の存在
ブラジキニン、プロスタグランジン、サブスタンスPなどの発痛物質の存在によ り、血管透過性を増大させ、炎症反応を引き起こして、疼痛の悪循環へ至る


6)各種血管拡張・収縮因子の存在
局所での血管拡張因子としてはノルアドレナリン作動性血管運動神 経の興奮は当然のごとく、アンギオテンシン、セロトニン、局所の温度低下、骨格筋・肝臓を除くカテコールアミンなどの影響があげられる、拡張因子として は、ノルアドレナリン作動性血管拡張神経の抑制、骨格筋・肝臓でのカテコールアミン、アセチルコリン作動性血管拡張神経の興奮、ヒスタミン、サブスタンス P、CGRPα、VIP、EDRF、酸素濃度低下、二酸化炭素濃度上昇、pH低下、乳酸、カルシウムイオン、ATP、局所温度上昇などでこれらの異常に よってもRSD様症状はおこりうる。


7)心理的因子
不安やストレスはノルアドレナリンの分泌を促進し、動脈の活動を亢進させて、RSD の要因をつくる。また疼痛そのものも情動と深い関係があるため心理的不安定はRSDの要因となりえる。

  治療方法

以上の発生機序に基づき、次のような治療が行える。
・この症候群について患者や家族に説明し、心理的ストレスを軽減さ せる。
・ Dr、セラピスト、患者、家族による包括的早期治療
・皮膚での血管拡張または血管収縮による寒冷または温熱の局所使用。痛みのある場合は寒冷が適 応となり、充分な期間頻回に使用し、ROMエクササイズと併用する。
・患肢の全関節の他動・自動運動(もしそれが難しければ、まず浮腫を取り除く ことから始める)
・ 患肢を頻回、長時間挙上させる。
・ 圧迫包帯などを使って他動・自動浮腫の除去
・ステロイドの追加の有無に関わらず局麻剤での局所の引き金域への注射
・血管冷却スプレーを使 い制限されている筋膜組織を伸張
・ 痛みにはTENSを使用することもできる
・ 局麻剤でAδ、C線維、交感神経をブロックする
・ 星状神経節のオピ注、交感神経切除など
・ 各種薬物投与


  まとめ

RSDは未だ解明されてないところが多いが、解明されている中で予想されうる原因を追求し、それに対する治療を考えて行くことが重要で、PTとし てできることはできるだけ早期より、浮腫やROM制限、疼痛の管理をおこない、機能障害をできるだけ最小に抑えることだと思う。日ごろから患者の状態に気 をとめ、その徴候があらわれたら早くからDrに相談し、治療をする必要があるだろうし、中大脳動脈領域の閉塞や大脳皮質4、6野を障害された場合は早期か らRSDに対する配慮を徹底すれば、ひどい機能障害を引き起こすまで進行するのをある程度防ぐことができるかもしれない。


参考文献
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